はじめに
増量期=「ただ太る」ではありません!
筋肉を大きくしたいなら、
「増量期」や「バルクアップ」は有効な手段です。
しかし、「まずは食べてとにかく体重を増やす」といった
とりあえずカロリーを詰め込む
「バルクアップ=脂肪をつけること」
だと誤解されていることも多くあります。
しかし、本来の増量期の目的は
体脂肪をできるだけ抑えながら、筋肉量を最大限増やすことです。
つまり、ただ体重が増えればいいというわけではないのです。
今回は、増量期にありがちな誤解を整理し、
増量期のバルクアップの方法や
脂肪を最小限に抑えつつ筋肥大を狙うための
具体的なバルクアップ戦略紹介していきます。
この記事はこんな方におすすめ!
- 筋トレを始めたばかりで、
増量の考え方がわからない方 - 増量期に「お腹が出る」のが不安で
思いきった食事ができない方 - バルクアップ=「太ること」と誤解していた方
- クリーンバルク・リーンバルク・ダーティバルク
の違いを知りたい方 - 増量と減量を繰り返すボディメイクの
考え方を整理したい方
増量期とは
筋トレをしている人にとって「増量期」は、
筋肥大(筋肉を大きくする)を加速させるための
大切なフェーズです。
ただし、やみくもに食べて
体重を増やせばいいというわけではなく、
筋肉の成長に必要なエネルギーと栄養を
計画的に上乗せする期間と理解することが重要です。
筋肥大とカロリー収支の関係
筋肉を成長させるには
「筋繊維の破壊→修復→強化」のサイクルが必要です。
この修復と成長の過程で、
通常の消費カロリー以上のエネルギー(=オーバーカロリー)
が必要になります。
- 消費カロリー < 摂取カロリー
→ 筋肥大が促進される
(オーバーカロリー) - 消費カロリー = 摂取カロリー
→ 体重は変わらず筋肉の成長は緩やか
(メンテナンスカロリー) - 消費カロリー > 摂取カロリー
→ 減量状態で筋肥大しにくくなる
(アンダーカロリー)
つまり、筋肥大を本気で狙うなら、
ある程度の体重増加=増量は必要です。
なぜ増量が必要なのか?
筋肥大に必要な要素である
- 材料(たんぱく質)
- エネルギー(糖質・脂質)
- ホルモン分泌
(特にインスリンやテストステロン)
をしっかりと機能させるためには、
カロリー不足の状態では不利です。
カロリー不足の状態の場合、
まずは生命活動を維持する必要最低限の機能が優先され、
材料やエネルギーが筋肉に供給されることが少なくなります。
また、十分な栄養状態にあるときのほうが、
- 筋トレのパフォーマンスの向上
- 疲労回復も早くなる
- 筋肉の合成効率も高まる
といったメリットがあります。
そのため、体が筋肉のために材料とエネルギーを使えるように
意識的に増量期を設けることが必要になるということです。
増量が不要なケース
一方で、以下のようなケースでは「増量期」を設けず、
メンテナンスカロリーもしくはやや減量寄りの食事でも
筋肥大は狙えます。
- 筋トレ初心者
(初心者ボーナス期間による筋肉合成が優位) - 体脂肪率が高め(25%以上)の方
増量期によくある悩み

「増量を始めて数週間…明らかにお腹が出てきた」
「ただただ太っているだけな気がする」
これは多くのトレーニーが通る道ですが、
正しく知っていればある程度対処もできます。
まずは、なぜ増量期にお腹が出たり、
太っただけの見た目に見えてしまうかの
原因を知るところから始めましょう。
主な原因とその仕組み
過剰なカロリー摂取(特に糖質・脂質)
- 増量=たくさん食べる、という意識が強すぎて、
消費以上の摂取が極端になると
脂肪として蓄積されやすい - 特に糖質と脂質を多く含む加工食品や
高GI食品は、インスリン感受性を悪化させ、
内臓脂肪の蓄積を助長
水分保持・グリコーゲンの貯蔵
- 糖質を多く摂ると筋肉内にグリコーゲンが
蓄えられますが、それには3〜4倍の水分がセット - そのため、急激に糖質を増やすと
体重やお腹周りが「水分込み」で膨らみやすい
消化力の低下・腸内環境の乱れ
- 消化酵素の処理能力を超えるような食事を
続けると、消化不良を起こしやすくなる - 結果として
「下腹部の張り」「便秘やガス溜まり」
によってお腹が出たように見える
腹筋やインナーマッスルの弱さ
- 見た目のぽっこり感は、
脂肪よりも腹圧コントロールの低下による
「姿勢の崩れ」も影響 - 腹筋が弱いと絞れて見えにくく、
太ったと感じやすい
単純な脂肪増加
- カロリーオーバーが大きすぎる場合、
筋肉よりも脂肪の方が早く・多く増えやすい
対策方法
- 食事
- 摂取カロリーはメンテナンスカロリー+250〜500kcal程度に抑える
- 低GI炭水化物を中心に構成
- 加工食品・脂質過多に注意
- トレーニング
- 腹筋・インナーユニット(プランク系)を
定期的に鍛える - スクワットやデッドリフトなど
腹圧を使う種目を積極的に行う
- 腹筋・インナーユニット(プランク系)を
- 有酸素
- 週2〜3回、30分程度の軽い有酸素を導入
(脂肪蓄積の抑制と血流促進)
- 週2〜3回、30分程度の軽い有酸素を導入
- 消化対策
- よく噛む、温かいものを食べる
- 発酵食品や食物繊維を適度に摂取
- 見た目管理
- 週1で体重とウエスト計測
- 「鏡チェック」で感覚と数値のズレを補正
バルクアップの種類と違い

一言で「増量期」、「バルクアップ」と言っても、
その進め方には大きく3つのアプローチがあります。
それが
「ダーティバルク」「クリーンバルク」「リーンバルク」です。
それぞれの特徴とメリット・デメリットをしっかり把握し、
自分に合った方法を選ぶことが重要です。
ダーティバルク(Dirty Bulk)
特徴
- 摂取カロリーの上限を気にせず、
できるだけ早く体重を増やす手法 - ファストフードや加工食品も含め、
とにかく食べる
メリット
- 急速な体重増が見込め、
トレーニング重量が上がりやすい - 食事のストレスが少ない
- 増量中の食費が比較的安く抑えられる
(食べるものにこだわらないため)
デメリット
- 脂肪も一緒に大幅に増えるため、
減量が大変になる - 内臓脂肪や健康リスク
(血糖値、肝機能など)の増加 - 見た目が大きく崩れる可能性が高い
クリーンバルク(Clean Bulk)
特徴
- 摂取カロリーはオーバーさせつつ、
質の良い食材・栄養バランスを重視 - 脂質・糖質の質にこだわり、
精製度の低い食品を中心に組む
メリット
- 脂肪の増加を抑えつつ筋肥大を狙える
- 健康的な体内環境を維持しやすい
- 減量への移行がスムーズ
デメリット
- 食事管理の手間がかかる
- 食材コストが高くなりやすい
- 成長スピードがやや緩やかになる傾向
リーンバルク(Lean Bulk)
特徴
- クリーンバルクと比較し
オーバーカロリーの数値も計算して管理する - 摂取カロリーはメンテナンスカロリー
+200〜300kcalと控えめ
メリット
- 体脂肪率をほぼ維持しながら筋肉量を増やせる
- バルク中も「見た目をキープ」しやすい
- 減量期の必要性が少なくなる
デメリット
- 筋肥大のスピードがかなり緩やか
- 摂取カロリーの調整・管理が非常にシビア
- 初心者には効果が見えにくく、
継続の難易度が高い
体脂肪率と増量期の見た目の関係
選ぶべきバルク法は、
あなたの目標・ライフスタイル・経験値によって変わります。
しかし、
「増量中、どこまで太っていいのか分からない」
「脂肪が増えてきたけど、これは想定内なのか?」
といった、どのタイミングで増量期を止めるべきかの基準は
どのバルク方法でも事前に体脂肪と見た目の基準を
持っておくと良いです。
私は、体脂肪率が18%前後の見た目になった時に
増量を止めています。
体脂肪率が20%を超えると、
男性の場合テストステロンレベル低下がみられることがあります。
テストステロンレベルの低下は、
そのまま筋肥大の効率の低下でもあるので
そうなってしまう前の18%くらいで止めちゃおうという感じです。
とはいっても、家庭用体重器やジムにある体重計の多くが
インピーダンス測定という方法で体脂肪を図っており、
場合によっては大きな誤差がでます。
そのため、体脂肪率の数字は参考程度にして、こだわりすぎず、
以下の見た目の特徴と照らし合わせて、
自分の見た目が18%に近づいたら止めるのがおすすめです。
体脂肪率と見た目のイメージ

体脂肪率 | 見た目の特徴 |
---|---|
約10% | 腹筋がうっすら割れている。血管が見えることも。 |
約12〜14% | 腹筋は薄く見える程度。全体的に引き締まって見える。 |
約15〜17% | 腹筋は消えがち。お腹が少し出てくる。筋肉は大きく見えるが、輪郭が曖昧。 |
約18〜20% | 明確にお腹が出る。胸や腕の筋肉の境目が見えづらくなる。 |
20%以上 | 顔や胴回りに脂肪が付き、筋肉の形が分かりづらい。 |
増量ペース別|週間体重増加と見た目変化の傾向
ペース | 増加量(週) | 筋量:脂肪の割合 | 見た目の変化 |
---|---|---|---|
ゆっくり型 | 0.5kg | 約7:3 | ほぼ目立たない。 じわじわ大きくなる印象。 |
標準型 | 1.0kg | 約6:4 | 筋肉と一緒にやや脂肪が増える。 少し丸みが出る。 |
早め型 | 1.5kg | 約5:5〜4:6 | 早期にお腹が出やすく、 顔にも脂肪が付きやすい。 |
増量中に使える「見た目のセルフチェック法」
- ウエストサイズの週次記録
(+3cm以上ならペース調整を検討) - 鏡チェック
(腹筋の視認性が落ちたタイミングで調整) - 撮影比較
(毎週・毎月の正面/側面/背面写真を保存)
「見た目」と「体重」はリンクしているようで、
タイムラグがあることも多いです。
急にお腹が出てきたと感じたら、
まずは写真と記録を見て、冷静に判断しましょう。
【実践法】私の増量期の具体的取り組み
私自身、これまで何度か増量期を設けて
バルクアップをしています。
その実体験をもとに、
成功パターン・失敗例・調整の工夫を具体的に紹介していきます。
筋トレを始める前は、体重も52~3kgほどのガリガリでしたが
増量をすることで、今では65~6kgほどまで
体を大きくすることができています。
※増量期の末期は73kgほどまでいきました。
特に「リーンバルクを無理なく続けたい」
「体型を崩さず筋肉を増やしたい」という方には、
きっと参考になるはずです。
増量期の全体設計:
年に1〜2回、1回最大4か月の期間で実施
初めての増量は勢いだけで進めてしまいましたが、
現在では年に1〜2回、1回につき
4か月程度の計画的なリーンバルクに近い増量を実施しています。
この取り組み方は、筋肉の成長と体型維持のバランスが
非常に合っていると感じており
増量末期となる4か月目付近でも、
大きく太ったなという印象はあまりなく進められています。
食事戦略:
カロリーとPFCバランスの意識
- カロリー摂取はメンテナンスカロリー
+ 300〜500kcalで設計 - PFCは
「たんぱく質 30%:脂質 20%:炭水化物 50%」
を目安に意識 - 週次で体重が0.5〜0.7kg増になるペース
に保つよう管理 - 体重が増えすぎた翌週は、
1日の摂取カロリーを150kcal程度引いて微調整
トレーニング戦略:
内容は増減量問わず一貫
- トレーニングは週5で、
「増量期でも内容は変えない」 - ただし、増量期はエネルギーが充実するので、
BIG3をはじめとして重量が明確に伸びた - 特にベンチプレスやデッドリフトの記録が順調に
伸びるのがモチベーションにもなる
学んだこと
成功体験:
- 増量と体重コントロールを週単位で見て、
適切に修正できるようになった - ダーティバルクに近いやり方(初回)よりも、
現在の「リーンバルクに近い手法」の方が
明らかに調子が良い
反省点:
- 「太りすぎるのが怖い」という意識から、
脂質を控えすぎた - 脂質の“質”にももっとこだわるべきだった
増量終了の判断ポイント
私の増量期終了の判断ポイントは
以下のどれか一つでも該当した場合にしています。
- 実施から4か月経過
- 見た目の体脂肪率が18%程度に達したとき
(腹筋が見えなくなった) - ベンチプレスなど、各部位の主要種目の伸びが
鈍化したとき
これらのいずれかが当てはまったら、
一旦増量は終了し、緩やかに減量へ移行しています。
増量後はどうする?
増量期が終わったら、いよいよ減量をしていきます。
しかし、この切り替えをうまく行わないと、
せっかく増やした筋肉を無駄にしたり、
リバウンドの原因になったりします。
ここでは、減量へのスムーズな移行や
減量中の体型管理法を解説します。
減量開始時のポイント
項目 | 内容 |
---|---|
カロリー設定 | 増量時よりマイナス300〜500kcalからスタート |
PFCバランス | たんぱく質:高めを維持(体重×1.5~2g)、脂質・炭水化物は徐々に削減 |
有酸素運動 | 減量をはじめて1か月程度たってから取り入れる |
体重記録 | 毎日測るのではなく、週平均で測り減少が見られればOK(週0.5kg程度減が目安) |
増量後の体型コントロールと心理ケア
- 増量期に蓄えた筋肉が、
減量期にはっきりしてくる過程を楽しむ - 見た目が小さくなる不安が出たら、
ウエストや腹囲のサイズ・写真比較を重視 - 減量の進行を「体重」ではなく
「見た目+記録」で管理する
「太ってから痩せる」は正しいか?
この考え方は「一定条件下では正しい」と言えます。
増量によって筋肉量が増えた状態で減量に入れば、
代謝は高く、痩せやすく、筋肉を残しやすい状態になります。
ただし、以下の注意点を押さえることが重要です。
- 増量が極端すぎると、減量にかかる期間が
長くなり筋分解のリスクも高まる - 「太ってから痩せればいい」という考えは、
計画的なボディメイクには向かない
バルクアップの成功は「増やしっぱなし」では終わりません。
増量後の減量戦略まで含めて1サイクルと考えるのが、
持続可能な筋肥大の鍵です。
まとめ
増量期は“戦略的に太る”意識が重要
「とにかく体重を増やす」では、
増量期はただの“太る期間”になってしまいます。
しかし、食事・トレーニング・休養のバランスを取りながら
戦略的に取り組めば、見た目もパフォーマンスも
向上する最強の筋肥大フェーズになります。
増量期の成功ポイント
- 目的は体重の増加ではなく「筋量の増加」
- 食事の質と量、両方を意識する
(PFCバランスが鍵) - 見た目を崩し過ぎたくないなら、
増量ペースは週0.5〜0.7kgが目安 - トレーニング強度の向上と記録の追跡を忘れない
- 増量後の減量戦略までを見据えた設計が大切
「太るだけの増量期」にならないためには、
- リーンバルクやクリーンバルクのように、
脂肪の増加を最小限に抑える設計を心がける - 「お腹が出る」悩みは食事内容・姿勢・腸内環境
の見直しで軽減可能 - バルクの種類や自分の性格・ライフスタイルに
合った戦略を選ぶことで、
継続のしやすさも変わる
増量は筋トレの“攻めフェーズ”です。
でも、ただ攻めればいいわけではなく、
「戦略的に、効率よく」攻めることが
理想のボディへの最短ルートになります。
今の自分に合ったスタイルを見極め、
無駄なく最大限の成果を出しましょう!