はじめに
筋トレでよく言われる「限界まで追い込め!」というアドバイス。
「毎回オールアウトまでやらないと意味がない」
「筋肉痛にならなきゃ効いてない」
そんなふうに考えていないでしょうか。
たしかに筋肉を成長させるためには、漸進性過負荷を目指して
トレーニング内で限界を目指すことは重要です。
そして適切なタイミングと強度での追い込みは、
筋肥大にとってとても効果的です。
しかし、「追い込み」はやり方を間違えると
- 成果が出ないどころか、
回復が追いつかずパフォーマンスダウン - フォームが崩れて怪我のリスク増加
- 体調を崩して筋トレが続かなくなる
という結果を招いてしまうこともあります。
常にボディメイクやフィットネスを考えられる環境なら良いですが
平日は社会人として働きながら、時間を作りながら
筋トレをしている方も多いと思います。
そんな多くの方にとっては、
「戦略的に追い込む」ことが重要になってきます。
この記事では、「追い込み」の定義や、限界の見極め方、
追い込むためのテクニック、
私が実施している追い込み方法を紹介していきます。
この記事はこんな方におすすめ!
- 「追い込みって、実際どのくらいやればいいの?」と悩んでいる
- 筋肉痛や疲労が抜けず、
トレーニングの成果が出ていない気がする - 毎回全種目で限界までやっているが
効果を感じない - 正しい知識で、安全に・効果的に
筋肥大を目指したい - 筋トレ歴が1〜3年で、
伸び悩みを感じている中級者層
そもそも追い込みとは何か?

まずは「追い込み」についての定義と種類を
整理して紹介していきます。
「追い込み」とは、筋トレにおいて
限界まで自分を追い詰めるような高強度のトレーニング
を意味しますが、
この「限界」にはいくつかの基準となる定義があります。
追い込みの基準:RM・RIR・オールアウト
- RM(Repetition Maximum)
- 最大反復回数のこと
- 10RMなら「10回が限界の重量」
- RIR(Reps In Reserve)
- 残りの余力
- RIR2なら「あと2回できる」状態で止める
という意味
- オールアウト
- RIR0、完全限界までやり切る状態
- もう1回も挙上ができない状態
追い込みの種類
- 物理的追い込み
- 限界重量、限界回数まで行う
- 明確な疲労感が残る
- 技術的追い込み
- フォームや効かせ方の完成度を
限界まで高める
- フォームや効かせ方の完成度を
- 精神的追い込み
- 気力・集中力の限界まで粘るトレーニング
- トップ選手に多い
特に一般トレーニーにとって重要なのは「物理的追い込み」です。
しかし、すべての種目で毎回必要というわけではありません。
筋肥大を起こすための要素のうち、
メカニカルテンション(筋肉への負荷の強さ)と
メタボリックストレス(筋内代謝産物の蓄積)
の観点から、追い込みはとても重要です。
- 高重量・低回数でのテンション型:
RIR1〜2でOK - 中重量・中回数でのストレス型:
RIR0(オールアウト)も効果的
つまり、常に1回も上げられない限界を迎える
オールアウトをすればいいわけではなく、
「目的と種目に応じた追い込み」が正解になってきます。
RIRで見る“追い込みの限界の見極め方”
「限界まで追い込め」と言われても、
その“限界”をどうやって測るのかは意外と難しいです。
そこで登場するのが先ほどの
「RIR(Reps In Reserve)」という考え方です。
RIRは「あと何回できそうか?」という主観的な余力の目安です。
RIR値 | 意味 |
---|---|
RIR0 | もう1回も挙げられない(完全限界) |
RIR1 | もう1回だけできそう |
RIR2 | あと2回はできそう |
RIR3 | 余裕あり(軽めのトレーニング) |
このRIRを使えば、自分の「限界に近づいているかどうか」
を可視化しやすくなります。
ボディメイクで筋肥大を狙う場合は、
RIR0~2で追い込むことが有効です。
とはいえ、これは主観的な目安のため、
特に初心者のうちは「限界がどこかわからない」
という悩みも出てきます。
その場合は、最初はRIR3程度を目安に挙上し、
次回のトレーニングでは、その回数+1を目指す、
そしてまたその次ではさらに+1回を目指すのがおすすめです。
この方法で筋トレを重ねるうちに、フォームを習得しながら
現在の自分の限界に近い挙上回数を把握することができます。
また、RIRの自分の中の基準ができてきてからは
オールアウト(RIR0)は週1〜2回の主要種目だけ
にとどめるのが現実的です。
毎回・全種目でオールアウトを狙うのは、
回復が追いつかず逆効果になることもあるので注意が必要です。
追い込みのメリット・デメリット

「追い込み」は、正しく使えば筋トレの成長を加速させる
最強の武器であることに間違いはありません。
一方で、使い方を間違えると「逆効果」にもなりえます。
追い込みのメリット・デメリットを把握し、
自身の筋トレに戦略的に組み込んでいきましょう。
✅ 追い込みのメリット
- 筋線維を最大限刺激でき、筋肥大に効果的
- 成長ホルモンやテストステロン分泌が促進される
- トレーニング効果の天井が高くなる
(伸び悩み対策) - 精神的な粘り強さや集中力が養われる
- 成果が数値(重量・回数)として現れやすい
- 短時間で効率よくトレーニングを終えられる場合がある
- 筋肉のパンプ感が得られ、
モチベーションが上がる - オーバーロード原則に忠実で
成長が理論的に加速する - 「あと1回の頑張り」がフォーム修正や
意識づけにも繋がる - 中上級者にとってのマンネリ打破につながる
⚠️ 追い込みのデメリット
- フォームが崩れやすく、怪我のリスクが高まる
- 中枢神経(CNS)への負担が大きく、疲労が蓄積
- 回復に時間がかかり、
次回トレーニングに影響が出る場合がある - 毎回やるとモチベーションの消耗が激しい
- 正しい「限界」の見極めが難しく、効果がブレる
- オーバートレーニングになりやすい
- 睡眠や栄養が不足していると逆効果
- 合理性に欠ける場合があり
「質より量」になりがち - 疲労により日常生活の
パフォーマンス低下につながる - 種目によってはトレーナーや補助者がいないと
安全な限界設定が難しい
追い込むために使えるテクニック
追い込みと一口に言っても、その手法はさまざまです。
ここでは、実際に使える追い込みテクニックを
まとめて紹介します。
初心者向け:
安全性を重視した軽負荷追い込み
- パーシャルレップ
- RIR1~2まで挙上した後に、重量はそのままに可動域を短くして限界まで動かす方法
- フォーム維持に注意
- 軽めのドロップセット
- RIR1~2まで挙上した後に、
重量を20~30%ほど落として
すぐに継続する方法 - 無理せず1セットだけのドロップでも
効果あり
- RIR1~2まで挙上した後に、
- テンポ調整
- 降ろすスピードを遅くすることで負荷増やす
- ケガの心配も少なく、フォーム練習にも◎
中~上級者向け:
ストレスを加える工夫を導入
- レストポーズ
- 限界まで挙上後、数秒休んで再度挙上する
- 数回の追加で成長刺激を確保
- アイソテンション法
- 動作を止めたまま筋肉に張力を与え続ける
- マッスルマインドコネクションの意識強化にも◎
- フォーストレップ
- パートナー補助で限界後も動作を継続
- 正しい補助が不可欠
- ネガティブレップ
- 降ろす動作(伸張性収縮)を意識して
限界後に数回耐えるように行う - 補助がいる状態でやるのがおすすめ
- 降ろす動作(伸張性収縮)を意識して
- コンパウンドセット
- 同じ筋群の異なる種目を連続して行う
どの種目で追い込むべきか
「追い込み」は万能な戦略ではありません。
すべての種目で限界まで行うと、
- 疲労の蓄積
- フォームの崩れ
- 怪我のリスクの高まり
むしろ筋トレの成果を遠ざけてしまいます。
では、どの種目で追い込みをかけるべきか、
その頻度やセット数の考え方について紹介していきます。
追い込みの対象種目は「メイン種目」に絞る

まず、大前提として全種目で追い込む必要はないと考えています。
24時間、筋肉のことのみ考え、
しっかりと回復・休養が取れる環境ならば
全種目の追い込みも有効かもしれません。
しかし、私含めそのような環境ではない中で
筋トレをしている方が大多数だと思います。
そんな中で効果的に結果を出すための「追い込み」として、
- 1回のトレーニングで追い込みを行うのは
1~2種目のみ - 可能であれば、多関節種目
(ベンチプレス・スクワット・懸垂など)が推奨
が効率的な方法です。
その理由として、
- 効率性
- 主要な筋肉を一度に刺激できる
- 回復力の確保
- 小筋群や補助筋を無理に追い込まないことで
全体のリカバリーを最適化
- 小筋群や補助筋を無理に追い込まないことで
- 集中力
- 筋トレによる疲労前の集中力が高い段階で
高重量を扱える
- 筋トレによる疲労前の集中力が高い段階で
また、追い込みをかけるべき種目はメインの1~2種目に絞りますが
その中の全セット追い込む必要はないです。
例えば、3セット行う場合、
1~2セット目をRIR1~2で行い、最終セットでRIR0にする。
そして必要であれば、最終セットで
レストポーズやドロップセットを行う。
このように「セット内で強度を変える」ことで、
疲労と効率のバランスが取れます。
1度の筋トレの全ての種目で追い込むのではなく、
質が高く、集中力を保てる「追い込み」
を目指すのがおすすめです。
【実践例】私の追い込み方法
「追い込みは全力で毎セット、毎種目やるもの」
そんなイメージを持っていた私も、
一時期は毎回疲れ果てるまで筋トレをしていました。
しかし、日常において筋トレ以外の全てを疎かにして
本末転倒になっていました。
筋肉のことしか考えないでよい環境にいる方以外は
「追い込み」を試行錯誤する必要があります。
私もいろいろ試した中で今の追い込み方法が
自分には合っていると気づけました。
私の追い込み方法としては
- 基本はメインとなる1種目で
「前回より1回でも多く挙上する」ことを
目標としてRIR0を出し切る - 「前回+1」の挙上回数で12回に到達したら
重量をアップする - 「前回+1」が実現できなければ、
レストポーズかドロップセットを行う
といった方法で取り組んでいます。
例えば、胸の日であれば
私はメイン種目をベンチプレスとしていて、3セット行っており
現在は100kgを8回挙上することができています。
- 次回のトレーニングでは
100kgを9回挙上することを目指す
これを12回挙上できるまで繰り返す - 12回挙上した次のトレーニングでは
重量をアップする - トレーニング内で前回と
同じ挙上回数で限界だったら、
レストポーズで1~3回ほど追加で挙上
もしくは80kg → 60kgとして2回のドロップセットで限界まで挙上
メイン種目以外にも、3~4種目ほどを
それぞれ2~5セットずつほどメニュー構成にいれていますが
それらの種目はすべてRIR2~3ほどにしています。
メイン種目以外の重量については、
メイン種目の重量を上げるタイミングで
一緒に上げるようにしています。
また、重量の増やす幅についてですが、
一気に増やすのは怪我のリスクやフォーム崩れもあるので
以下のルールにしています。
- プレート系
- 2.5〜5kgずつ
- ダンベル
- 2kgずつ
- マシン
- スタック1段階ずつ
筋トレ系のSNSを見ていると、
めちゃくちゃ追い込んで限界を超えている人もいらっしゃいます。
たしかに、鬼気迫る追い込みのトレーニングは迫力もあり
かっこいいし、尊敬もしています。
とはいえ、普通の社会人として働く身としては、
すべての種目で追い込むような筋トレをしていた時期は、
- 疲労管理が困難になる
- 後半の種目での追い込みは質が下がる
- フォームも崩れることが多い
(怪我のリスクが高くなる) - 筋肉よりも神経の消耗が強い気がする
こんな状態になり、正直日常生活や仕事にも
支障をきたすことがありました。
「追い込む」ことは筋肥大に有効なのは間違いないです。
しかし、すべての種目で追い込まずとも
私のような取り組み方でも筋肥大はできていますし、
一般的にはそこそこ褒められる体も目指せます。
なので、特に社会人として働いている方には
私の追い込み方法が参考になってくれると嬉しいです。
まとめ
「追い込みこそが正義」
という考え方がかっこよいのもわかります。
しかし、趣味で筋トレしている方や
常に筋肉のことのみを考えられる環境ではない方にとっては
日常生活を犠牲にしすぎず、取り組むことも大切です。
日々の成長は、
1回1回のトレーニングの質の積み重ねによって生まれます。
全力でやることも大切ですが、
それ以上に、賢くやり続けることが最短ルートです。
次回のトレーニングから、
「今日はどこでどう追い込むか?」を意識してみてください。
本記事のポイントまとめ
- 追い込みは目的・種目に応じて使い分けるべき
- RIRを使えば自分の限界をコントロールしやすい
- 全種目追い込む必要はなく、
1〜2種目に絞るのが現実的 - 回数や重量の“少しずつの進化”が最大の追い込み
- 食事・睡眠・回復がなければ
追い込みは逆効果になる